現役トレーダー・フッキーの「金融リテラシー養成大学」

現役のトレーダーとしての実感・経験・視点から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。

PO(公募増資・売出)って実際どうなの?

どうもこんにちは。現役のトレーダーで、どちらかと言うと投機家のフッキーです。
当ブログでは、現役のトレーダーとしての実感・経験・知識から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。
 
今回は「PO(公募増資・売出)って実際どうなの?」について述べていきたいと思います。
※耳で聞きたい方のためのラジオ版(同内容のYouTube)はこちら↓
現役トレーダー・フッキーの「金融リテラシー養成大学」
 
 
☆そもそもPOって何?
 
本題に行く前にPOについて説明します。
POとは「Public Offering」の略称で、日本語では「公募増資・売出」と言います。
定義は、既に上場している企業が「新たに株式を発行or市場に出回っていない既存株主の保有株の放出」によって広く一般投資家から資金調達を行うこと、です。
なので基本的にはPOは「企業の資金調達の手段」として認識しておいてもらえればいいかと思います。
 
PO投資家にとって重要なのは「価格決定日」と「受渡日」の2つです。
POが発表されてから約一週間くらいで価格決定日になり、だいたいこの日の終値から数%ディスカウントした価格で、手数料なしで投資家は抽選で配分された分の株を買うことが出来ます。(売却するときは普通に手数料がかかります。)
しかし価格決定日の翌日にすぐ売却出来るわけではなく、価格決定日から約一週間くらい先の受渡日にならないと売却出来ません。
なので仮に価格決定日から受渡日まで株価が変わらなかったら受渡日に売却したらディスカウント分だけ利益が出るということになります。
ちなみに受渡日は「売却出来る最短の日」であって、そこから1年保有しようが10年保有しようが自由です。
 
 
☆それで、POって実際どうなの?
 
POに申し込んだから利益が出るのかどうか、結論から言うと
 
「どっちとも言えない」
 
ということになります。
つまりは「利益確率:損失確率=50:50」ということです。
結論としては上記のようになるのですが、ここで考えてほしいのが「企業はなぜPOをするのか?」です。
ここからは推測になりますが、おそらくPOは
 
企業側からの「株価はもう高い」というメッセージ
 
ということになるんじゃないかと考えています。
理由は「POをする企業にとっては株価が高い方がメリットが大きいから」です。
詳しく説明します。
1,000,000株の新株を追加発行する方式でPOをする企業があるとします。
この企業の株価が1,000円だとすると調達額は
 
1,000円×1,000,000株=10億円
 
ということになります。
しかし株価が500円の時にPOをすると調達できる金額は
 
500円×1,000,000株=5億円
 
となります。
つまりは株価が高ければ高いほど少ない株数で多くの金額の調達が出来るということです。
更にPOは新株発行方式だと「既存株主の価値の希薄化」をもたらします。
これはどういうことか説明します。
発行済み株式総数=1,000,000株で、株価=1,000円の企業があったとすると、この企業の時価総額
 
1,000円×1,000,000株=10億円
 
ということになります。
そしてこの企業が1,000,000株の新株を追加発行する方式でPOするとします。
そうすると発行済み株式総数は2,000,000株になりますが、これが仮に株価が1,000円で変わらなかったとすると時価総額
 
1,000円×2,000,000株=20億円
 
ということになってしまいます。
POはただの資金調達なので利益が出たわけでもなんでもありません。
なのでPOしただけで上記のように時価総額が増えるのはおかしいので、実際はもともとの時価総額に向けて株価の調整が入る場合が多いです。(この場合には株価が1,000円→500円に向かう場合が多い、ということ。)
この調整が「既存株主の価値の希薄化」と呼ばれるもので、既存の株主にとっては「なにしてくれとんじゃ!」ということになります。
新株発行方式でない既存の大株主の売出しでは希薄化は起こりませんが、市場に流通して供給される株式数が増えるので、需要と供給の関係から株価が下がる場合が多いです。(ベンチャーキャピタルが投資対象からEXITするときなどで売出しが使われることが多いです。)
 
つまりはこのPOというものは発行体は資金調達が出来るし、売出しをする株主にとっては現金が入ってくるという「発行体・売出しをする株主にとってはメリットがあるイベント」であるのに対し、それ以外の既存株主からしてみたら「希薄化するわ、需給バランスが崩れるわというどちらかと言うとデメリットが多いイベント」ということになると考えます。
そして発行体からしてみたら「いま株価が高いから今のうちに資金調達しておこう」という意図が推測でき、ベンチャーキャピタルからしてみたら「この投資対象から得られるものは得たから、もう手放しても構わない」という意図が推測できます。
もちろん彼らの見通しが外れてPO後にもっと株価が上がる場合もありますし、逆に株価が下がる場合もあります。
ですがそれは時の運次第で確定的なことは何もないので「50:50」というワケです。
 
 
☆まとめ
 
以上述べてきましたが、POへの申し込みを考える場合にはまず第一にPOに際して発行される「目論見書」を見て、「手取り金の使途」を読んでみた方がいいと思います。
そこに調達した資金の使い道が書かれているので、その内容に納得して「株価が上がる」と考えるのならば買ったらいいと思いますし、「これはダメそうだな」と思えば買わなければいいワケです。
いずれにせよ自己責任ですが、少なくとも目論見書は一度見ておいた方がいいと思います。
 
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。