現役トレーダー・フッキーの「金融リテラシー養成大学」

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塩漬け株のレシピ

どうもこんにちは。現役のトレーダーで、どちらかと言うと投機家のフッキーです。
当ブログでは、現役のトレーダーとしての実感・経験・知識から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。
 
今回は「塩漬け株のレシピ」について述べていきたいと思います。
※耳で聞きたい方のためのラジオ版(同内容のYouTube)はこちら↓
 
 
塩漬け株のレシピの概要
 
レシピの全体像を記すと以下の4つのSTEPになります。
 
STEP②「保有効果」&「現状維持バイアス
STEP③「プロスペクト理論」&「損失回避バイアス」
STEP④「確証バイアス」
 
それではSTEP①から順を追って説明していきます。
 
 
☆STEP①「バンドワゴン効果
 
まず「どの株を仕込むか?」ということに関してですが、「バンドワゴン効果」とは、
 
「みんなが買っているものを買いたくなり、みんなが売っているものを売りたくなる脳の働き」
 
のことです。
これを株にあてはめると、
 
「値上がりしている株を買いたくなり、値下がりしている株を売りたくなる。」
 
ということになります。
塩漬け株を作る時は主に「買い」なので、人間の生理に従うと「上がっているチャートの株」を買うことになります。
 
 
 
☆STEP②「保有効果」&「現状維持バイアス
 
ここからは株を仕込んだあとのプロセスになります。
保有効果」とは、
 
「自分が持っているものの価値を市場価値よりも高く見積もってしまう脳の働き」
 
のことで、
 
「変化を嫌い、現状維持を好む脳の働き」
 
のことです。
株に置き換えると、買った株が値下がりして含み損が出ている時に、この「保有効果」と「現状維持バイアス」が働きやすくなり、
 
「自分が持っている株は含み損が出ているが、市場価格が間違っているのであって本来は自分が買った水準よりももっと高い価格になっているハズだ。
今後株価がはもっと下がるかもしれないが、逆に上がるかもしれない。
わからないが、戻る可能性があるのならば下手に動いて損切するよりも現状維持でこのままにしておいた方が良い。なんならば買い増しをした方が良いのかもしれない」
 
という状態になります。
つまりは人間の生理に従うと、含み損になった時には「損切りをする」という変化を起こすよりも、「損切りをしないで現状維持のまま買いを継続する」という現状維持の方を自然と選好するということです。
これで「浅漬け」が出来上がります。
 
 
☆STEP③「損失回避バイアス」&「プロスペクト理論
 
そしてここからは本格的に漬かっていくプロセスになり、個人的にはこのSTEP③で説明する「損失回避バイアス」と「プロスペクト理論」が「塩漬け株」を作るにおいては最も重要なファクターだと考えています。
まず「損失回避バイアス」とは、
 
「人間にとっては損失は非常に辛いものであり、非常にイヤなものなので、利益を得ることよりも損失を回避する方に重きを置いてしまう脳の働き」
 
のことです。
簡単に言うと「人間は損をすることが大嫌い」ということになります。
そして「プロスペクト理論」とは、
 
「人間は普段は損失回避的に行動するが、損が出ている状況ではリスク追求的に行動する、という傾向」
 
のことを言います。
「負けが込んで追い詰められたギャンブラーが、一発逆転をかけて大勝負に出る」というのはこのプロスペクト理論で説明出来ます。
 
株にあてはめると、塩漬け株損切りすると損失が確定してしまうので、そもそも脳の生理としては損切りし辛くなっています。
そしてプロスペクト理論がその「塩漬け状態の維持」に拍車をかけます。
つまりは「このまま持っていればもっと下がるかもしれないが、逆に上がるかもしれない」といったリスク追求型の行動に走らせます。
こうしてまた損切り出来ず仕舞いになるワケです。
もうここまで来れば「かなり漬かった状態」になっています。
 
 
☆STEP④「確証バイアス」
 
そして最終STEPの「確証バイアス」ですが、ここまで進むと「塩に漬かり過ぎて、もう食べれない状態」になる可能性が高いです。
「確証バイアス」とは、
 
「何かを確認したり検証したりするときに、自分が正しいことを証明する証拠や根拠ばかりを集めてしまう脳の働き」
 
のことです。
これを株にあてはめると、人間の生理に従えば含み損が出ているときには、
 
「いま自分が持っている株が今後値上がりして元の水準に戻る理由ばかりを集めてしまう」
「株を買って持ち続けているという自分の行動が正当化されるような証拠や根拠ばかりを集めてしまう」
 
ということになりがちだということです。
そしてそれが進むと「保有効果」「現状維持バイアス」「プロスペクト理論」「損失回避バイアス」のスパイラルが強化され続けていき、
 
「辛すぎて食べられない塩漬け株
 
が出来上がります。
 
 
塩漬け株を作らないようにするためには
 
これまで「塩漬け株が出来るプロセス」を説明してきましたが、投資をしている誰もが塩漬け株を作りたくないと思っていると思います。
ではどうすればいいのか?
その答えの1つが、
 
塩漬け株が出来るプロセスの逆をしていくこと」
 
になります。
これを別の言葉で言い換えると、
 
「人間の生理に反する意思決定や行動をしていくこと」
 
ということになると思います。
具体的には、
 
STEP①「バンドワゴン効果」「確証バイアス」
「みんなが買っているから」や「値上がりしているから」という理由で株を買わない。
そして自分の軸で考えてピックアップした銘柄について「上がる可能性」だけではなく、「下がる可能性」の両方をフラットに考えて「期待値が出そうな方向」に賭ける。
 
STEP②「保有効果」&「現状維持バイアス
「自分が主観的に決めた株価が正しく、市場でついている株価が間違っている」と思わない。
「市場でついている株価が正しい」ということを認識し、現状維持にこだわらず、損切りするべき時には損切りする。
 
STEP③「損失回避バイアス」&「プロスペクト理論
「そもそも人間の脳は損切りするのを好まない」ということを認識し、「脳が損切りしたいか、したくないか」ではなく、「損切りが合理的か、そうでないか」を軸にして考える。
「それでも損切りしたくない」となったら、「自分に都合の良いシナリオを考えて、気付かないうちにリスク追求型の行動をしていないか?」をチェックする。
 
ということです。
 
☆まとめ
 
対応策についてつらつらっと書きましたが、これらは基本的に人間の生理に反することなので、日頃からこういったバイアスを意識するトレーニングをしていないと、いざという時にサッと出来ない可能性が高いです。
逆に言えば日頃からバイアスを意識するトレーニングをしていれば、こういった「人間の生理には反するが、投資においてはまだマシな意思決定・行動」をとれるようになる可能性が高いワケです。
そしてこれはあくまで「投資においてはまだマシな意思決定・行動」なので、これをやったからといって「絶対に勝てるようになる」ワケではないことは了承しておいて頂ければと思います。
しかし個人的にはこの「まだマシな意思決定・行動」を積み重ね洗練していくことで、「再起不能な大負けをすること」や「退場すること」を避けることが出来ると考えており、それで生き残ってしぶとく考えていった先に「トータルで見るとプラスの期待値になる投機・投資」があると考えています。
色々とご意見はあるかと思いますが、この考えが誰かの何がしかの参考になれば幸いです。
 
長文でしたが最後まで読んで頂き、ありがとうございました。