現役トレーダー・フッキーの「金融リテラシー養成大学」

現役のトレーダーとしての実感・経験・視点から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。

ドルコスト平均法についてのよくある誤解その②:「リスクを下げる投資法」という誤解

どうもこんにちは。現役のトレーダーのフッキーです。
当ブログでは、現役のトレーダーとしての実感・経験・知識から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。
 
今回は「ドルコスト平均法についてのよくある誤解その②:『リスクを下げる投資法』という誤解」について述べていきたいと思います
※「ラジオ的に耳で聞きたい」という方のためにYouTubeでも同内容をアップしています。
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☆「リスクを下げる投資法」という誤解
 
結論から言うと、
 
ドルコスト平均法には「下がるリスク」と「下がらないリスク」がある
 
というのが個人的な認識です。
一般的には「ドルコスト平均法は一括で投資するよりもリスクを下げる万能な投資法」という認識が市民権を得ていると見受けられますが、それは誤解だと思います。
そして
 
下がるリスク=自分の資産の変動リスク
下がらないリスク=株価そのものの変動リスク
 
ということになると思います。
 
 
☆「リスク」についての認識を再確認
 
解説に入る前に「リスク」ということについての認識を再確認しておきます。
一般的には「この株価のリスクは10%」と言うと「この株価は10%下落する可能性がある」と認識されがちですが、金融の世界では違います。
つまり「この株価のリスクは10%」ならば「この株価は10%上昇する可能性もあるし、10%下落する可能性もある」というのが金融的(というか学術的な)リスクというものに対する認識です。
これを踏まえた上で解説に入ります。
 
 
☆下がるリスク=自分の資産の変動リスク
 
一括投資とドルコスト平均法を比較して考えるとわかりやすいのですが、例えばあなたが資産1000万円を持っているとして、それをリスク10%の株に「100万円を一括で投資する場合」と「10万円×10回=合計100万円をドルコスト平均法で投資する場合」を考えてみましょう。
一括投資の場合の変動可能性は、
 
上昇:100万円→110万円になる(+10万円)
下落:100万円→90万円になる(-10万円)
 
となり、あなたは資産1000万円に対して「±10万円」の変動リスクを負ったことになるので、パーセンテージ換算すると「あなたの資産の変動リスク=±1%(±10万円÷1000万円)」ということになります。
対してドルコスト平均法の場合は10万円しか投資しないので変動可能性は、
 
上昇:10万円→11万円になる(+1万円)
下落:10万円→9万円になる(-1万円)
 
となり、あなたは資産1000万円に対して「±1万円」の変動リスクを負ったことになるので、パーセンテージ換算すると「あなたの資産の変動リスク=±0.1%(±1万円÷1000万円)」ということになります。
 
つまり一括で投資した場合でもドルコスト平均法で投資した場合でも「リスク10%の株」に投資していることに変わらないので、どちらも投資額に対して±10%の変動がありますが、金額換算してみた場合には一括投資の場合には「資産1000万円に対して±10万円の資産変動リスク=±1%の資産変動リスク」で、ドルコスト平均法の場合には「資産1000万円に対して±1万円の資産変動リスク=±0.1%の資産変動リスク」になるので「資産の変動リスクは一括投資に比べてドルコスト平均法の方が小さくなる」と言えるワケです。
 
 
☆下がらないリスク=株価そのものの変動リスク
 
上記の説明でお気づきの方もいるかと思いますが、一括投資とドルコスト平均法を比較した場合には「投資金額が違うから、その分自分の資産の変動リスクも変わってくる」ということになりますが、「100万円→+10万円or-10万円」でも、「10万円→+1万円or-1万円」でも、どちらも±10%変動していることに変わりはありません。
つまりは一括投資をしようがドルコスト平均法をしようが「株価そのものの変動リスクは変わらない」ということです。
 
 
☆まとめ
 
ドルコスト平均法について割と「株価の変動を下げる効果がある」と誤認識している人が多くいるなと思ったので、この記事を書いた次第です。
ちなみに個人的にはドルコスト平均法自体を否定しているつもりはなく、むしろ行動経済学的な観点で言えばドルコスト平均法機械的に買っていくやり方は「自信過剰」「損失回避バイアス」「プロスペクト理論に従った非合理的なリスク追求的行動」を強制的に回避する意味でも「まだマシな手法」と思っています。
少なくとも「セミナー・本・教材で言っている、そもそもエビデンスがあるのかどうかも疑わしいよくわからん手法」に下手に手を出すよりは「はるかにマシな手法」と思っています。
いずれにせよドルコスト平均法は「リスクを下げ、自然と資産が増えていき、ほったらかしで済む、安全確実な手法」という認識は100%間違いで、あくまで「自分の資産の変動リスクを管理しながら徐々に増やしていく手法(あと色々なバイアスを強制的に回避できる手法)」という認識でいる方が健全だと個人的には考えます。
 
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。

ROAとは何か?

どうもこんにちは。現役のトレーダーのフッキーです。
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今回は「ROAとは何か?」について述べていきたいと思います
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ROA
 
正式名称はReturn On Assetで、日本語では自己資本収益率や純資産収益率などと言います。
計算式は
 
=純利益÷総資産
※総資産=純資産+負債
 
で、「投資家から預かったお金+借金を、いかに効率良く使って利益を出しているか」を測る指標になります。
例えば純利益200億円・総資産1000億円の企業があるとしたら、この企業のROA
 
ROA=200億円÷1000億円
  =20%
 
ということになります。
要は「ROAが高い企業=お金の使い方が上手い企業」になりますし、「ROAが低い企業=お金の使い方が上手くない企業」ということになります。
 
 
ROAROEの最大の違い
 
ROAROEの最大の違いは何なのかというと
 
ROEはマジックが効くのに対して、ROAはマジックが効かないこと」
 
です。
どういうことか説明します。
さっきと同じように純利益200億円・総資産1000億円の企業があるとします。
そしてこの総資産の資産構成が「純資産500億円+負債500億円」だったとすると、この企業のROAROE
 
ROA=純利益÷総資産
  =200億円÷1000億円
  =20%
 
ROE=純利益÷純資産
  =200億円÷500億円
  =40%
 
になります。
そしてこの企業が次年度に配当や自社株の消却などの株主還元を300億円分行うと同時に銀行などから300億円を借り入れた結果、純利益200億円・総資産1000億円(純資産200億円+負債800億円)になったとします。
この場合のROAROE
 
ROA=純利益÷総資産
  =200億円÷1000億円
  =20%
 
ROE=純利益÷純資産
  =200億円÷200億円
  =100%
 
になります。
ここで注目してほしいのは、「ROAは全体の資産の利益効率性なので資産構成を変えてもその数値は変わらないが(20%→20%)、ROEは純資産の利益効率性なので資産構成を変えただけでその数値も変わってしまうこと(40%→100%)」です。
つまりはいたずらにROEだけを投資指標として見ると「本当にその企業の利益効率性は成長しているのかどうかはわからない」ということです。
なのでもし「投資する際の判断基準として、利益効率性の成長を見る」のであればROEの推移よりもROAの推移を見た方がいいと思います。
もちろんROAでも純利益・総資産ともに減って純利益100億円・総資産200億円になった場合でも
 
ROA=純利益÷総資産
  =100億円÷200億円
  =50%
 
となり「純利益は減っているんだけどROAは高まっている」という状態になるので「ROAが高まる=利益が伸びる」という図式は必ずしも成り立ちませんが、少なくともこの場合には「利益を生み出すために必要なリソースが前よりも少なくて済んでいる状態」であることに変わりはないので、もし今後もこの50%というROAを維持できれば総資産が元の1000億円になった時には純利益は前よりも多い500億円(=1000億円×50%)になる可能性が高いということになります。
 
 
☆まとめ
 
まとめると
 
ROA=全体の資産の利益効率性を測る指標
ROE=投資家から預かった純資産の利益効率性を測る指標
 
ROA=マジックが効かない
ROE=マジックが効く
 
ROA=その企業の利益効率性の水準を測る上では割と有効
ROE=その企業の利益効率性の水準を測る上ではあまり使えない
 
ということになります。
結局は「どの項目を重要視するか?」によると思うので、自分なりに納得した項目を基準にしてやっていって頂ければと思います。
 
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。

専業トレーダーになることをおすすめしない理由

どうもこんにちは。現役のトレーダーで、どちらかと言うと投機家のフッキーです。
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今回は「専業トレーダーになることをおすすめしない理由」について述べていきたいと思います。
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☆おすすめしない理由その①「年度によって収入がぶれる」
 
トレーディングという「殊更不確実性が高い仕事」においては年度によって収入がぶれにぶれます。
僕の例で言うとだいたい「+10%~+80%」くらいの範囲内で収入がぶれます。もちろんこの範囲外になる可能性もありますが、試行回数を増やしていくことでだいたい中間値に収まるんじゃないかと思っています。
ということで、収入がぶれにぶれるので今後の計画というのはかなり立てづらいので、何かを計画するときにはだいぶ保守的に計画を立てることになります。
あと収入が少ないタイミングだと気分があまり良くないので、そもそもその計画をキャンセルしたくなります。
 
 
☆おすすめしない理由その②「ストレスが強いので、精神的にキツい」
 
利益確率が100%ではない以上、もちろん損失が出ることもあります。というかザラです。
そういう意味ではトレーディングで得た収益というのは「暫定的な収益」であり、それを市場にお返ししなければならないことが頻繁に起こります。
この日々の損益の増減は脳にとって非常に強いストレス要因ですし、気を抜くと「このままで大丈夫なんだろうか?」というよろしくない空想が湧いてきます。
給料で例えるなら「前月は100万円の給料をもらったが、今月は50万円を会社に返さなければならなかった」という感じになります。
会社員の場合は給料は一度もらったらば、よほどのことをやらかさない限りは会社に返すことはないのでそういう意味では「一度手に入れたものを手放すストレス」とは無縁なワケです。仮にそんな会社があったら暴動が起きているでしょう。
そしてこの「一度手に入れたものを手放すストレス」というのはどれほどのものなのかは行動経済学の「プロスペクト理論」で説明できます。
 
同じ額の利益と損失があったとすると、利益の方は実額そのままに心の中で感じられるが、損失の方は心の中では実額の2~2.5倍の強度で感じてしまうこと。
 
ということを言います。
具体例を挙げます。
「利益/回=100万円、損失/回=100万円」
「利益確率=60%、損失確率=40%」
の取引があったとすると、この期待値は
 
実際の期待値=100万円×60%-100万円×40%
      =60万円-40万円
      =+20万円
 
ということになります。
この取引は「やればやるほど利益が積み重なっていく取引」ということになるのでやらない理由はないワケです。
しかしこの取引は心の中ではどう感じているかと言うと、
 
心の中で感じている期待値=100万円×60%-(100万円×2)×40%
            =60万円-80万円
            =-20万円
 
ということになります。
つまりは実際の期待値はプラスなので取引を積み重ねれば利益が積み重なっていっているのに、心の中の期待値はマイナスなので取引を積み重ねるほどにストレスや精神的ダメージが積み重なっていっているワケです。
それほどに損失というのは精神へのダメージが大きいです。
 
 
☆おすすめしない理由その③「社会的信用がほぼゼロ」
 
トレーディングは不確実性に向き合う仕事なので、収入も不確実性があることはさきに説明しましたが、これは主に「マンション・アパートを借りるとき」などに問題となってきます。
大家さんに「職業は?」と聞かれて「自営業です」と答えると、
 
「自営業、仕事が不安定そうだな」
 
と思われる可能性が高いと思います。
そして「具体的には?」と聞かれて「株のトレーダーです」と答えると、
 
「自営業かつ、株のトレーダー?こいつは本当に家賃払えるのか?」
 
と思われる可能性が高いと思います。
そうなると本来は毎月家賃を払っていくのを「一年間分の家賃を前払い」ということになりかねないワケです。
こちらとしては「一年間分の家賃を運用に回したらいくぶんか利益が出せると思うのにな」と思うので、前払いしないに越したことはないワケです。
 
ということで「株のトレーダー」というのは一般的には「不安定な仕事の代表格」として見られがちなので、こういった社会的な面でデメリットが出てきます。
そしてこれは銀行で住宅ローンや車のローンを借りるときにも同じことが言えると思います。
おそらく貸してくれないことはないのでしょうが、リスク相応分に金利は高くなると思います。
 
 
☆まとめ
 
以上が「専業トレーダーになることをおすすめしない理由」でした。
僕の場合には「会社の制度上、会社員でいることの方が独立するよりもデメリットが大きかった」ので独立して専業のトレーダーになっているワケですが、基本的には上記の理由で専業トレーダーになることはおすすめしていません。
個人的なおすすめは「会社勤めをして給料をもらいながら株の勉強をし、じっくりと投資をしていく」です。
もちろん人間関係とかのストレスはあるかとは思いますが、「給料がもらえない不安」はないと思うので「経済的なストレス」を抱えながら投資をすることは避けられると思います。
そういった無駄なストレスがない環境でじっくり勉強していって自分の納得できる方法で投資をしていくのがいいんじゃないかと思っています。
最後に投資の神様ウォーレン・バフェットの名言を
 
「投資には野球みたいにスリーアウトはない。絶好球が来るまで待てばいい。」
 
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。

塩漬け株のレシピ

どうもこんにちは。現役のトレーダーで、どちらかと言うと投機家のフッキーです。
当ブログでは、現役のトレーダーとしての実感・経験・知識から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。
 
今回は「塩漬け株のレシピ」について述べていきたいと思います。
※耳で聞きたい方のためのラジオ版(同内容のYouTube)はこちら↓
 
 
塩漬け株のレシピの概要
 
レシピの全体像を記すと以下の4つのSTEPになります。
 
STEP②「保有効果」&「現状維持バイアス
STEP③「プロスペクト理論」&「損失回避バイアス」
STEP④「確証バイアス」
 
それではSTEP①から順を追って説明していきます。
 
 
☆STEP①「バンドワゴン効果
 
まず「どの株を仕込むか?」ということに関してですが、「バンドワゴン効果」とは、
 
「みんなが買っているものを買いたくなり、みんなが売っているものを売りたくなる脳の働き」
 
のことです。
これを株にあてはめると、
 
「値上がりしている株を買いたくなり、値下がりしている株を売りたくなる。」
 
ということになります。
塩漬け株を作る時は主に「買い」なので、人間の生理に従うと「上がっているチャートの株」を買うことになります。
 
 
 
☆STEP②「保有効果」&「現状維持バイアス
 
ここからは株を仕込んだあとのプロセスになります。
保有効果」とは、
 
「自分が持っているものの価値を市場価値よりも高く見積もってしまう脳の働き」
 
のことで、
 
「変化を嫌い、現状維持を好む脳の働き」
 
のことです。
株に置き換えると、買った株が値下がりして含み損が出ている時に、この「保有効果」と「現状維持バイアス」が働きやすくなり、
 
「自分が持っている株は含み損が出ているが、市場価格が間違っているのであって本来は自分が買った水準よりももっと高い価格になっているハズだ。
今後株価がはもっと下がるかもしれないが、逆に上がるかもしれない。
わからないが、戻る可能性があるのならば下手に動いて損切するよりも現状維持でこのままにしておいた方が良い。なんならば買い増しをした方が良いのかもしれない」
 
という状態になります。
つまりは人間の生理に従うと、含み損になった時には「損切りをする」という変化を起こすよりも、「損切りをしないで現状維持のまま買いを継続する」という現状維持の方を自然と選好するということです。
これで「浅漬け」が出来上がります。
 
 
☆STEP③「損失回避バイアス」&「プロスペクト理論
 
そしてここからは本格的に漬かっていくプロセスになり、個人的にはこのSTEP③で説明する「損失回避バイアス」と「プロスペクト理論」が「塩漬け株」を作るにおいては最も重要なファクターだと考えています。
まず「損失回避バイアス」とは、
 
「人間にとっては損失は非常に辛いものであり、非常にイヤなものなので、利益を得ることよりも損失を回避する方に重きを置いてしまう脳の働き」
 
のことです。
簡単に言うと「人間は損をすることが大嫌い」ということになります。
そして「プロスペクト理論」とは、
 
「人間は普段は損失回避的に行動するが、損が出ている状況ではリスク追求的に行動する、という傾向」
 
のことを言います。
「負けが込んで追い詰められたギャンブラーが、一発逆転をかけて大勝負に出る」というのはこのプロスペクト理論で説明出来ます。
 
株にあてはめると、塩漬け株損切りすると損失が確定してしまうので、そもそも脳の生理としては損切りし辛くなっています。
そしてプロスペクト理論がその「塩漬け状態の維持」に拍車をかけます。
つまりは「このまま持っていればもっと下がるかもしれないが、逆に上がるかもしれない」といったリスク追求型の行動に走らせます。
こうしてまた損切り出来ず仕舞いになるワケです。
もうここまで来れば「かなり漬かった状態」になっています。
 
 
☆STEP④「確証バイアス」
 
そして最終STEPの「確証バイアス」ですが、ここまで進むと「塩に漬かり過ぎて、もう食べれない状態」になる可能性が高いです。
「確証バイアス」とは、
 
「何かを確認したり検証したりするときに、自分が正しいことを証明する証拠や根拠ばかりを集めてしまう脳の働き」
 
のことです。
これを株にあてはめると、人間の生理に従えば含み損が出ているときには、
 
「いま自分が持っている株が今後値上がりして元の水準に戻る理由ばかりを集めてしまう」
「株を買って持ち続けているという自分の行動が正当化されるような証拠や根拠ばかりを集めてしまう」
 
ということになりがちだということです。
そしてそれが進むと「保有効果」「現状維持バイアス」「プロスペクト理論」「損失回避バイアス」のスパイラルが強化され続けていき、
 
「辛すぎて食べられない塩漬け株
 
が出来上がります。
 
 
塩漬け株を作らないようにするためには
 
これまで「塩漬け株が出来るプロセス」を説明してきましたが、投資をしている誰もが塩漬け株を作りたくないと思っていると思います。
ではどうすればいいのか?
その答えの1つが、
 
塩漬け株が出来るプロセスの逆をしていくこと」
 
になります。
これを別の言葉で言い換えると、
 
「人間の生理に反する意思決定や行動をしていくこと」
 
ということになると思います。
具体的には、
 
STEP①「バンドワゴン効果」「確証バイアス」
「みんなが買っているから」や「値上がりしているから」という理由で株を買わない。
そして自分の軸で考えてピックアップした銘柄について「上がる可能性」だけではなく、「下がる可能性」の両方をフラットに考えて「期待値が出そうな方向」に賭ける。
 
STEP②「保有効果」&「現状維持バイアス
「自分が主観的に決めた株価が正しく、市場でついている株価が間違っている」と思わない。
「市場でついている株価が正しい」ということを認識し、現状維持にこだわらず、損切りするべき時には損切りする。
 
STEP③「損失回避バイアス」&「プロスペクト理論
「そもそも人間の脳は損切りするのを好まない」ということを認識し、「脳が損切りしたいか、したくないか」ではなく、「損切りが合理的か、そうでないか」を軸にして考える。
「それでも損切りしたくない」となったら、「自分に都合の良いシナリオを考えて、気付かないうちにリスク追求型の行動をしていないか?」をチェックする。
 
ということです。
 
☆まとめ
 
対応策についてつらつらっと書きましたが、これらは基本的に人間の生理に反することなので、日頃からこういったバイアスを意識するトレーニングをしていないと、いざという時にサッと出来ない可能性が高いです。
逆に言えば日頃からバイアスを意識するトレーニングをしていれば、こういった「人間の生理には反するが、投資においてはまだマシな意思決定・行動」をとれるようになる可能性が高いワケです。
そしてこれはあくまで「投資においてはまだマシな意思決定・行動」なので、これをやったからといって「絶対に勝てるようになる」ワケではないことは了承しておいて頂ければと思います。
しかし個人的にはこの「まだマシな意思決定・行動」を積み重ね洗練していくことで、「再起不能な大負けをすること」や「退場すること」を避けることが出来ると考えており、それで生き残ってしぶとく考えていった先に「トータルで見るとプラスの期待値になる投機・投資」があると考えています。
色々とご意見はあるかと思いますが、この考えが誰かの何がしかの参考になれば幸いです。
 
長文でしたが最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

ROEとは何か?

どうもこんにちは。現役のトレーダーのフッキーです。
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今回は「ROEとは何か?」について述べていきたいと思います
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ROE
 
正式名称はReturn On Equityで、日本語では自己資本収益率や純資産収益率などと言います。
計算式は
 
=純利益÷純資産
 
で、「投資家から預かったお金を、いかに効率良く使って利益を出しているか」を測る指標になります。
例えば純利益200億円・純資産1000億円の会社があったとしたら、この会社のROE
 
ROE=200億円÷1000億円
  =20%
 
ということになります。
この会社のROEが変わらないのであれば、純資産が5000億円なら1000億円の純利益を出してくれることになります。
一般的には15〜20%以上が「ROEが高い(=効率良く利益を出している)」と見做され、5%くらいだと「ROEが低い(=効率良く利益を出していない)」と見做されます。
ちなみに日本の企業の平均ROEは7%くらいで、アメリカの企業の平均ROEは12~15%くらいと聞いています。
明らかにアメリカの企業の方が投資家から預かったお金を使って効率良く利益を出しているということです。
2012年頃から日本では「ROEを意識した経営」がブームになり、関連書籍もたくさん出ていましたが、それは何故かと言うとROEが高い企業は投資家のお金を上手く使えるということなので、投資においては相対的にROEが高い企業が好まれる風潮がその頃から日本においても高まってきたからです。
 
 
ROEの注意点
 
一般的にはROEが高い企業は投資家から預かったお金を上手く使えるということになっているので、投資=ビジネスオーナーになるという風に考えるのであれば投資する企業のROEが高いに越したことはありません。
 
しかし厄介なのは、このROEというのは純利益を一切増やすことなくROEだけ高めるというマジックを使うことが可能だということです。
そのマジックのタネは「総資産に占める負債の割合を増やして、純資産の割合を少なくすること」です。
どういうことか説明します。
さっきと同じで純利益200億円・純資産1000億円の企業があるとします。
この場合のROE
 
ROE=200億円÷1000億円
  =20%
 
でした。
そして次の年度も200億円の純利益を挙げたとしますが、違うのはこの年度には株主還元のために純資産500億円を使って配当を行い、吐き出した分を埋めるために金融機関から500億円借り入れたとしましょう。
この場合は純利益200億円・純資産500億円・負債500億円ということになりますが、ROEは負債を除いた純資産のみを使って計算するので
 
ROE=200億円÷500億円
  =40%
 
ということになります。
これが純利益自体は変えずとも、資産構成を変えるだけでROEはいくらでも高めることが出来るということです。
単純に「ROEが高い企業=お金を上手く使える良い企業」という風に定義すればROEが前年比で2倍になったこの企業は「前年度よりも良い企業」ということになりますが、その実純利益額自体は変わっておらず、むしろ借り入れを増やしたことで財務体質は前年度よりも相対的に脆弱になっています。
 
 
☆まとめ
 
ROEは投資の際の一つの基準たりえますが、上記で述べた通りマジックも可能なので企業間を比較する時は「この企業の資産構成はどうなっているだろうか?」という視点も必要だと思います。
つまりはROEの数値だけを見るのではなく、その元となる純利益と資産構成の変化も見ておいた方がいいということです。
というか比較にはROAを見ればだいたい一発で利益効率がわかるのですが、それはまた別の回で説明したいと思います。
 
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。

株式投資を始める前に、自分に問いかけておくべきこと

どうもこんにちは。現役のトレーダーで、どちらかと言うと投機家のフッキーです。
当ブログでは、現役のトレーダーとしての実感・経験・知識から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。
 
今回は「株式投資を始める前に、自分に問いかけておくべきこと」について述べていきたいと思います。
※「ラジオ的に耳で聞きたい」という方のためにYouTubeでも同内容をアップしています。
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株式投資を始める前に、自分に問いかけておくべきこと
 
結論から言うと、
 
株式投資にお金と時間を使うよりも、自己投資や他のことにお金と時間を使った方が利回りがいいんじゃないか?」
 
ということです。
これは、
 
「慣れていないこと・経験がないことにお金と時間を使うよりも、慣れていること・経験があることにお金と時間を使った方が上手く行きやすいんじゃないか?」
 
と言い換えることも出来ます。
たまに知り合いや友人から「株式投資を始めてみたいんだけど・・・」という相談を受けるのですが、質問に答えたあとに必ず聞くのが「勉強のためにやっておきたいというなら止めないけど、お金を稼ぐことが目的ならば投資よりも自己投資や他のことの方にお金と時間を使った方が効率よく稼げる可能性ってないか?」ということです。
そしてそういう時に感じるのが、
 
「投資って楽して稼げる不労所得だと思ってるんだろうな。」
 
ということです。
このことについてはハッキリと「NO」と言っておきたいです。
 
 
株式投資は楽して稼げる不労所得ではない
 
個人的な意見ですが、株式投資は楽して稼げる不労所得ではないと考えています。
なぜならば投資決定をするまでに経ておいた方がいいプロセスが膨大なため、決して「楽する」ことは出来ないからです。
そして確かに「肉体的には不労」ですが、「精神的・知的には過労」だという実感なので、どちらかと言うと「不労所得」ではなく「過労所得」に該当すると考えているからです。
尚、個人的に「投資決定をするまでに経ておいた方がいいと思っているプロセス」は以下のようになります。
 
①取引期待値がプラスになりそうな仮説・モデルを立てる
②仮説を検証するために、該当する実際のマーケットデータを分析する
③分析して出てきた確率・平均値について統計的有意性を検証する(二項分布とかF検定とかT検定とか)
④その仮説で出てきたモデルのベータ・アルファを分析する
⑤「最悪の場合」でも生き残って、モデルを継続出来るような投下資金量を決定する
⑥実際のマーケットでやってみて、実数とモデルについて監視・分析する
⑦監視・分析の結果「モデルが正しいのかどうか?」を検討する
⑧モデルが間違っているとする結果」が出てこなかったらそのまま継続(このプロセスはモデルが上手く機能しないリスクが伴った状態なので結構ストレスがかかる)
⑨「モデルが間違っているとする結果」が出てきたら手仕舞って、イチからまたやり直し
 
このことを自分が(たぶん)出来ている理由は、「このことについて考えるのが楽しいし、専業なのでこのことに割く時間がたっぷりある」ということと、そもそも「これらのことをして収益を挙げないと生活が出来なくなる」ということがあります。
「絶対にこのプロセスじゃないとダメ!」ということではないですし、そもそもこれをやったからと言って絶対に利益が出るワケでもないし、何らならばまだ改良の余地は多分にあると考えていますが、それでも本業をしながらこれらのことをしようとするのは、よほど強いモチベーションがないと出来ないと思います。
それよりも「勝手知ったる本業やその他のことにお金と時間を使った方がもっと効率がいいんじゃないか?」と思っています。
そしてそれは「投資のROIC<本業のROIC」なのではないか、という考えが前提にあります。
 
 
☆ROICとは何か?
 
ROICとは「Return On Invested Capital」のことで日本語では「投下資本利益率」と言います。
計算式は、
 
ROIC=利益額÷利益を得るために投下した金額
 
です。
これを「利益額=収入の増加額」「利益を得るために投下した金額=自己投資の金額」と捉えれば、「自分ROIC」が計算できます。
そして一般的には「株式投資が上手く行った場合に得られる期待利回り=平均5~7%程度」と言われているので、「自分ROIC」が「5~7%」を上回っているのならば、そもそも株式投資をする経済合理性などなく、他のことをした方がいいということになります。
ポイントは「株式投資でそれなりの金額の利益を挙げるためには多くの投下資金量が必要だが、それ以外の場合はそれなりの金額の利益を挙げるためには投下資金量が多い必要はない」ということです。
例えば「50万円をかけて英語の勉強をして外資系企業に転職した結果、収入が100万円上がった」というのであれば「自分ROIC=200%(100万円÷50万円)」ということになります。
英語の勉強には時間がかかるかもしれませんが、同じ時間をかけてもこの200%を株式投資で挙げようとするのは非常に困難だと思います。
もし同期間に株式投資で200%のROICを達成できたとしても、それはたまたまである可能性も、あり決して「再現性がある」とは言えないので今後も同じことが出来るとは限りません。
その点英語の場合は一度身につけてしまえば脳の機能障害にでもならない限りは「再現性がある」ということになるので、今後も同じことを出来る可能性が高いと思います。
つまりは「自分ROICを上げること」の最大のメリットは「効率性が高いこと」と「再現性がある可能性が高いこと」だと考えます。
これが営業の方だったら「キーマンとのつながりを作るために、お金を払って経営者の会合に参加する」とかでもおそらくROICは相当高いんじゃないかと思います。
 
 
☆まとめ
 
以上色々と述べてきましたが、ポイントをまとめると、
 
⓪そもそも株式投資は「楽して稼げる不労所得」ではない(実感としては精神的な過労所得)
株式投資でそれなりの金額の利益を挙げるには、多くの資金量が必要
②そもそも株式投資が「上手く行った場合」に得られる期待利回り=平均5~7%程度である
③たまたま上手く行っても、その再現性は疑問符がつく
④一方「自己投資やその他のこと」でそれなりの金額の利益を挙げるには多くの資金量は必要ではない
⑤「自分ROIC」の方が利回りが高い可能性も高いし、再現性がある可能性も高い
 
ということになります。
株式投資も自己投資も「リスクがある」ということは共通していますが、最大の違いは「効率性」と「再現性」になります。
なのでみなさんも投資をする前にここらへんのことを気に留めて頂いた上で、株式投資をした方が効率がいいのか、それとも自己投資やその他のことをした方が効率がいいのかを判断して頂けたらと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
 

PO(公募増資・売出)って実際どうなの?

どうもこんにちは。現役のトレーダーで、どちらかと言うと投機家のフッキーです。
当ブログでは、現役のトレーダーとしての実感・経験・知識から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。
 
今回は「PO(公募増資・売出)って実際どうなの?」について述べていきたいと思います。
※耳で聞きたい方のためのラジオ版(同内容のYouTube)はこちら↓
現役トレーダー・フッキーの「金融リテラシー養成大学」
 
 
☆そもそもPOって何?
 
本題に行く前にPOについて説明します。
POとは「Public Offering」の略称で、日本語では「公募増資・売出」と言います。
定義は、既に上場している企業が「新たに株式を発行or市場に出回っていない既存株主の保有株の放出」によって広く一般投資家から資金調達を行うこと、です。
なので基本的にはPOは「企業の資金調達の手段」として認識しておいてもらえればいいかと思います。
 
PO投資家にとって重要なのは「価格決定日」と「受渡日」の2つです。
POが発表されてから約一週間くらいで価格決定日になり、だいたいこの日の終値から数%ディスカウントした価格で、手数料なしで投資家は抽選で配分された分の株を買うことが出来ます。(売却するときは普通に手数料がかかります。)
しかし価格決定日の翌日にすぐ売却出来るわけではなく、価格決定日から約一週間くらい先の受渡日にならないと売却出来ません。
なので仮に価格決定日から受渡日まで株価が変わらなかったら受渡日に売却したらディスカウント分だけ利益が出るということになります。
ちなみに受渡日は「売却出来る最短の日」であって、そこから1年保有しようが10年保有しようが自由です。
 
 
☆それで、POって実際どうなの?
 
POに申し込んだから利益が出るのかどうか、結論から言うと
 
「どっちとも言えない」
 
ということになります。
つまりは「利益確率:損失確率=50:50」ということです。
結論としては上記のようになるのですが、ここで考えてほしいのが「企業はなぜPOをするのか?」です。
ここからは推測になりますが、おそらくPOは
 
企業側からの「株価はもう高い」というメッセージ
 
ということになるんじゃないかと考えています。
理由は「POをする企業にとっては株価が高い方がメリットが大きいから」です。
詳しく説明します。
1,000,000株の新株を追加発行する方式でPOをする企業があるとします。
この企業の株価が1,000円だとすると調達額は
 
1,000円×1,000,000株=10億円
 
ということになります。
しかし株価が500円の時にPOをすると調達できる金額は
 
500円×1,000,000株=5億円
 
となります。
つまりは株価が高ければ高いほど少ない株数で多くの金額の調達が出来るということです。
更にPOは新株発行方式だと「既存株主の価値の希薄化」をもたらします。
これはどういうことか説明します。
発行済み株式総数=1,000,000株で、株価=1,000円の企業があったとすると、この企業の時価総額
 
1,000円×1,000,000株=10億円
 
ということになります。
そしてこの企業が1,000,000株の新株を追加発行する方式でPOするとします。
そうすると発行済み株式総数は2,000,000株になりますが、これが仮に株価が1,000円で変わらなかったとすると時価総額
 
1,000円×2,000,000株=20億円
 
ということになってしまいます。
POはただの資金調達なので利益が出たわけでもなんでもありません。
なのでPOしただけで上記のように時価総額が増えるのはおかしいので、実際はもともとの時価総額に向けて株価の調整が入る場合が多いです。(この場合には株価が1,000円→500円に向かう場合が多い、ということ。)
この調整が「既存株主の価値の希薄化」と呼ばれるもので、既存の株主にとっては「なにしてくれとんじゃ!」ということになります。
新株発行方式でない既存の大株主の売出しでは希薄化は起こりませんが、市場に流通して供給される株式数が増えるので、需要と供給の関係から株価が下がる場合が多いです。(ベンチャーキャピタルが投資対象からEXITするときなどで売出しが使われることが多いです。)
 
つまりはこのPOというものは発行体は資金調達が出来るし、売出しをする株主にとっては現金が入ってくるという「発行体・売出しをする株主にとってはメリットがあるイベント」であるのに対し、それ以外の既存株主からしてみたら「希薄化するわ、需給バランスが崩れるわというどちらかと言うとデメリットが多いイベント」ということになると考えます。
そして発行体からしてみたら「いま株価が高いから今のうちに資金調達しておこう」という意図が推測でき、ベンチャーキャピタルからしてみたら「この投資対象から得られるものは得たから、もう手放しても構わない」という意図が推測できます。
もちろん彼らの見通しが外れてPO後にもっと株価が上がる場合もありますし、逆に株価が下がる場合もあります。
ですがそれは時の運次第で確定的なことは何もないので「50:50」というワケです。
 
 
☆まとめ
 
以上述べてきましたが、POへの申し込みを考える場合にはまず第一にPOに際して発行される「目論見書」を見て、「手取り金の使途」を読んでみた方がいいと思います。
そこに調達した資金の使い道が書かれているので、その内容に納得して「株価が上がる」と考えるのならば買ったらいいと思いますし、「これはダメそうだな」と思えば買わなければいいワケです。
いずれにせよ自己責任ですが、少なくとも目論見書は一度見ておいた方がいいと思います。
 
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。