現役トレーダー・フッキーの「金融リテラシー養成大学」

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ドルコスト平均法についてのよくある誤解その②:「リスクを下げる投資法」という誤解

どうもこんにちは。現役のトレーダーのフッキーです。
当ブログでは、現役のトレーダーとしての実感・経験・知識から、「金融リテラシーの向上」に役に立ちそうな情報・知識をアウトプットしています。
 
今回は「ドルコスト平均法についてのよくある誤解その②:『リスクを下げる投資法』という誤解」について述べていきたいと思います
※「ラジオ的に耳で聞きたい」という方のためにYouTubeでも同内容をアップしています。
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☆「リスクを下げる投資法」という誤解
 
結論から言うと、
 
ドルコスト平均法には「下がるリスク」と「下がらないリスク」がある
 
というのが個人的な認識です。
一般的には「ドルコスト平均法は一括で投資するよりもリスクを下げる万能な投資法」という認識が市民権を得ていると見受けられますが、それは誤解だと思います。
そして
 
下がるリスク=自分の資産の変動リスク
下がらないリスク=株価そのものの変動リスク
 
ということになると思います。
 
 
☆「リスク」についての認識を再確認
 
解説に入る前に「リスク」ということについての認識を再確認しておきます。
一般的には「この株価のリスクは10%」と言うと「この株価は10%下落する可能性がある」と認識されがちですが、金融の世界では違います。
つまり「この株価のリスクは10%」ならば「この株価は10%上昇する可能性もあるし、10%下落する可能性もある」というのが金融的(というか学術的な)リスクというものに対する認識です。
これを踏まえた上で解説に入ります。
 
 
☆下がるリスク=自分の資産の変動リスク
 
一括投資とドルコスト平均法を比較して考えるとわかりやすいのですが、例えばあなたが資産1000万円を持っているとして、それをリスク10%の株に「100万円を一括で投資する場合」と「10万円×10回=合計100万円をドルコスト平均法で投資する場合」を考えてみましょう。
一括投資の場合の変動可能性は、
 
上昇:100万円→110万円になる(+10万円)
下落:100万円→90万円になる(-10万円)
 
となり、あなたは資産1000万円に対して「±10万円」の変動リスクを負ったことになるので、パーセンテージ換算すると「あなたの資産の変動リスク=±1%(±10万円÷1000万円)」ということになります。
対してドルコスト平均法の場合は10万円しか投資しないので変動可能性は、
 
上昇:10万円→11万円になる(+1万円)
下落:10万円→9万円になる(-1万円)
 
となり、あなたは資産1000万円に対して「±1万円」の変動リスクを負ったことになるので、パーセンテージ換算すると「あなたの資産の変動リスク=±0.1%(±1万円÷1000万円)」ということになります。
 
つまり一括で投資した場合でもドルコスト平均法で投資した場合でも「リスク10%の株」に投資していることに変わらないので、どちらも投資額に対して±10%の変動がありますが、金額換算してみた場合には一括投資の場合には「資産1000万円に対して±10万円の資産変動リスク=±1%の資産変動リスク」で、ドルコスト平均法の場合には「資産1000万円に対して±1万円の資産変動リスク=±0.1%の資産変動リスク」になるので「資産の変動リスクは一括投資に比べてドルコスト平均法の方が小さくなる」と言えるワケです。
 
 
☆下がらないリスク=株価そのものの変動リスク
 
上記の説明でお気づきの方もいるかと思いますが、一括投資とドルコスト平均法を比較した場合には「投資金額が違うから、その分自分の資産の変動リスクも変わってくる」ということになりますが、「100万円→+10万円or-10万円」でも、「10万円→+1万円or-1万円」でも、どちらも±10%変動していることに変わりはありません。
つまりは一括投資をしようがドルコスト平均法をしようが「株価そのものの変動リスクは変わらない」ということです。
 
 
☆まとめ
 
ドルコスト平均法について割と「株価の変動を下げる効果がある」と誤認識している人が多くいるなと思ったので、この記事を書いた次第です。
ちなみに個人的にはドルコスト平均法自体を否定しているつもりはなく、むしろ行動経済学的な観点で言えばドルコスト平均法機械的に買っていくやり方は「自信過剰」「損失回避バイアス」「プロスペクト理論に従った非合理的なリスク追求的行動」を強制的に回避する意味でも「まだマシな手法」と思っています。
少なくとも「セミナー・本・教材で言っている、そもそもエビデンスがあるのかどうかも疑わしいよくわからん手法」に下手に手を出すよりは「はるかにマシな手法」と思っています。
いずれにせよドルコスト平均法は「リスクを下げ、自然と資産が増えていき、ほったらかしで済む、安全確実な手法」という認識は100%間違いで、あくまで「自分の資産の変動リスクを管理しながら徐々に増やしていく手法(あと色々なバイアスを強制的に回避できる手法)」という認識でいる方が健全だと個人的には考えます。
 
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。